こんな内容について語っています
- 体調不良や愚痴につながる「3G(我慢・義務・犠牲)」の対処法
- 一般企業の社長とは、規模拡大後に担う役割がまったく違う院長先生の特性
- 週7日のうち5.5日を診察に費やし疲弊した院長が、4.5日に減らせた個別支援の実例
- 退職や人材不足を招くスタッフへの伝え方
- なぜ多くの院長先生が、経営とマネジメントで行き詰まるのか?
対談内容(全文)
遠藤隆弘 × 石上峻
今回の動画で「3G」という言葉を初めて聞く方もいらっしゃると思います。
「我慢・義務・犠牲」の頭文字をとって「3G」と呼んでいます。この3G自体が悪いわけではありません。ただ、我慢、義務、犠牲が多すぎると、体や心に不調をきたしたり、愚痴っぽくなったりしやすくなります。愚痴が溜まっている方は、少し3Gを背負いすぎているのかもしれません。
そのため、これらを少しずつ手放していくことが今の時代には必要だと思っています。もちろん、一気に手放すのは不安を伴う部分もあるので、少しずつ手放していくことが大切です。
院長と一般的な企業の社長のポジションや働き方の違いについて、とても興味が湧いてきました。
例えば、院長先生の場合は直接患者様を診ますよね。つまり、トップ自らがお客様と直接関わります。一方、一般的な企業の社長の場合、現場のお客様対応は営業担当が行うことが多く、社長自身は外部の企業との取引や金融機関との融資交渉など、外回りの業務を担います。事業規模が大きくなるにつれて、社長は現場対応以外の業務が多くなるのが特徴です。
整形外科クリニックは小規模であっても3つほどの部署を抱える組織ですが、そのトップである院長が、すべての患者様と直接関わり続けるというのは、一般企業で考えると珍しいことのように感じます。
なかなかないことですよね。クリニックでも、代わりの医師を採用して規模を拡大していくと、金融機関や取引業者など外部との関わりが増えるため、トップが一歩現場から抜ける必要が出てきます。しかし、医師の方はそもそも「現場から抜ける」という発想を持ち合わせていないことが多く、どうしても一人で診療を抱え込みすぎてしまいます。
先日も、ある院長先生の個別支援を行った際、週7日のうち5.5日も診察に入られていました。日曜日の1日と土曜日の午後以外はすべて診察という状況です。その結果、疲弊してしんどくなっておられました。そこで「診察を週4.5日に減らしましょう」と提案して話を進めたところ、院長先生ご自身も「それならいけるな」と実現可能性を感じてくださいました。
患者様のためを思って診療を抱え込んでしまうお気持ちは分かります。ただ、自分が現場の時間を空けることが、結果的に社会のため、プライベートのため、そして周囲の人のためになると理解できると、業務を少しずつ手放せるようになります。
確かにそうですね。週に5.5日も働いた上で、残りの休日や半休を使って、元いた病院へ非常勤で働きに行く医師もいらっしゃいます。とんでもない体力と気力ですよね。
皆さん本当にすごいと思います。だからこそ、スタッフの皆さんも「院長を助けたい」と思うのですが、具体的な支援の仕方がわからず、院長とスタッフの間で摩擦が起きてしまうことがあります。方向性には賛同していても、実行方法が分からずにリーダー層が四苦八苦している状況もよく見かけます。そこに、コミュニケーションのあり方や具体的なやり方を導入することで、院長先生をより手助けできる環境を作っていけるのが嬉しいところです。
院長先生ご自身も、コミュニケーションについて体系的に学んでこられたわけではないですよね。それは患者様に対する接し方にも表れていると感じます。
私は営業の勉強をしてきたので感じるのですが、医師という職業は少し特殊です。例えば、薬を処方することは、抽象的に見れば「商品の販売」にあたります。一般的な店舗型ビジネスであれば、一つの商品を売るために、接客やホスピタリティ、商品説明のプレゼンテーションなどを何度も練習し、試行錯誤を重ねます。
ところが医師の場合は、「あそこが痛いのですね。ではこの薬を飲んでおいてください」と伝えるだけで、患者様は「わかりました」と受け入れます。しかも体に副作用があるかもしれないものなのに、それが成り立ってしまう。そこが医療の特殊であり、すごいところだと感じます。
「食後にこれを飲んでくださいね」「どうして飲まなかったのですか?」と直接的に言える。一般のセールスではなかなか考えられない関係性です。それが日常的に成り立っているからこそ、悪気はなくとも、どうしても「指示出し」のコミュニケーションが多くなる傾向があります。
院長先生のコミュニケーションスタイルを見ていると、大きく二つのタイプに分かれると感じます。一つは、厳しくストレートに伝えすぎてしまい、スタッフが耐えきれずに辞めてしまうケース。もう一つは、優しいがゆえにオブラートに包みすぎて、本音や具体的な指示内容が伝わらないケースです。
いずれのタイプであっても、自身のコミュニケーションスタイルを学んでいくことが重要です。クリニックアカデミーでは、院長先生だけでなく部署リーダーの方々も一緒にコミュニケーションを学ぶため、お互いの理解が深まり、スムーズな連携が取りやすくなります。
私自身、医療現場から離れて外部の業者様とメールや電話、対面でのやり取りを始めた際、一般的なビジネスコミュニケーションの知識が全くありませんでした。初めて業者様にメールを送った際、「お疲れ様です」と書き出してしまい、外部対応に慣れている上司から厳しく注意されたことがあります。その時、自分はそういった基本すら知らなかったのだと痛感しました。医療現場には、コミュニケーションのあり方ややり方を丁寧に教わる環境が十分になかったのだと強く感じています。
クリニックはかなり特殊な環境ですよね。「お客様=患者様」であるという構造自体が、そういった特殊性を生み出しているのだと強く感じます。
本当に特殊ですよね。一般的な商売では、お客様が明確な困り事を抱えて来店されること自体が少ないと思います。ヒアリングをしてお困り事を引き出し、ようやく「それなら弊社のサービスで解決できますよ」という状態に持っていくのが通常です。一方、クリニックには最初から「体が痛い」「具合が悪い」といった、非常に深刻で明確なお困り事を持った患者様がいらっしゃいます。そういった違いが、医療特有の環境を生んでいるのでしょうね。
そうですね。集客という意味でも、一般企業はしっかりとした商品やサービスを作り込んだ上で集客を考えますが、クリニックは一定の需要があるため、開院すれば患者様がいらっしゃいます。もちろん、院長先生の素晴らしい診察があってこそですが、そうやって患者様が増えていく。
また、医師は属性が高いため銀行の融資も受けやすく、土地や建物を準備してスムーズに開業できてしまいます。しかし、その結果として「経営」や「マネジメント」を本格的に学ばないまま組織運営をスタートしてしまうことが多いのです。患者様が増える中で、マネジメントを知らないままスタッフに対して患者様と同じような「指示出し」のコミュニケーションをとってしまうと、スタッフが疲弊して退職し、人材不足に陥ってしまいます。この領域には、私たちが支援できることがたくさんあると強く感じています。
それこそ遠藤さんにお聞きしたいのですが、一般的な店舗型サービスを開業するというのは、どれほど大変なものなのでしょうか。なんとなく難しいというイメージはあるのですが、実際はどのような感じなのでしょうか。
めちゃくちゃ難しいですよ。まず、商品やサービスを作ること自体が大変です。それが確実に売れるという確信を持てなければスタートできません。そして何より一番難しいのが「融資」です。
例えば、あるクリニックの分院長が独立する際、2億数千万円という規模の融資が比較的簡単に下りたという話を聞きます。一般的な事業者の場合、5年、10年と綿密に積み上げた事業計画書を提出して、自己資金も2〜3割求められて、ようやく融資が下りるか下りないかという厳しい世界です。ところが院長先生の場合は、「自己資金は1割で大丈夫です」と、驚くほどスムーズに融資が下りてしまうことがあります。
一般の事業者は、開業までに膨大な準備と時間をかけます。しかしその分、実務の準備ができているので、開業後の運営は比較的スムーズです。一方で院長先生は、開業までは進めやすいのですが、いざ開院してみると、経営とマネジメントという両軸の勉強が突然必要になり、そこで壁にぶつかって苦労されるケースが多いのです。
私自身は開業までに非常に時間がかかり、苦労して準備をしてきた経験があるからこそ、院長先生のマネジメント支援において良い相乗効果が生み出せるのではないかと思っています。
経営の手法自体を教えている専門家は他にたくさんいらっしゃるので、そういった領域は専門家にお任せすればいい。私は、スタッフとの関係性やコミュニケーションといった人間関係の領域に特化して支援をお届けしたいと考えています。院長先生が抱えるネガティブな悩みの半分以上は人間関係に起因するものですから、そこを私たちが解決できればと。
石上さんは実際にクリニックの内側でその課題に向き合ってきた経験がありますし、その両面があるからこそ、より良い支援ができるはずです。やはり、医療現場が抱えやすい構造上の課題は非常に大きいですね。
おっしゃる通りですね。私も遠藤さんとお話ししてクリニックアカデミーを構築していく過程で、医療組織の経営構造そのものが課題を生みやすい環境なのだと初めて理解しました。
外部の企業で働く友人や、研修でお会いする経営者の方とお話しする機会はありましたが、やはりクリニックの内側に入ってみないと、この構造的な違いには気づけなかったと思います。遠藤さんと深く議論しながら作り込んでいく中で私自身も多くのことに気づかされましたし、クリニックアカデミーは医療現場の課題に対して大きくお役に立てる場所だと強く感じています。
院長とスタッフの関係づくりは、コミュニケーションを学ぶところから変わります。
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